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テーマ 日本の雪模様、豪雪・多雪地帯はどこか
40年間の気象庁公式観測記録(積雪深日本記録、降雪日本記録)を解析して日本のどこが一番雪深いのかを明らかにした。
2024年3月31日 荒戸 利昭
目 次
1. 緒 言
1.1 本研究の目的
1.2 研究方法
2. 結 果
2.1 北海道
2.2 東北地方
2.3 北陸地方
2.4 その他の地方
3. 総 括
1. 緒 言
1.1 本研究の目的
この自由研究は2023年の猛暑を題材にした夏の自由研究に続く、冬バージョンです。
日本列島は夏の蒸し暑さとか日中の最高気温が35℃を超える「猛暑日」とか、熱帯地方にもひけをとらない暑さがありますが、一方冬には地域によっては1mを超えるような積雪もあり、その夏と冬の季節感の相違が日本の風土の厳しさと同時に魅力ともなっています。
最近では、日本のみならず地球全体が温暖化と呼ばれ、冬の温暖化にもつながるように考えられていますが、果たしてどうでしょうか。
本自由研究では、日本の有名な豪雪、多雪地帯の雪量がどの程度のものか調べてみました。
ところで、「豪雪」という言葉の決まって定義はありません。イメージとして、降雪、積雪による害が甚大である場合に使用されています。とくに気象庁では、「三八豪雪」「五六豪雪」や「五八豪雪」などと正式名にも使用します。この辺はあとで解説しましょう。
日本列島の南方では、どこまで降雪や積雪の記録があるのでしょうか。北海道や東北、北陸では雪景色が何か月も続くのは当たり前ですが、南国地方でどのくらい降雪、積雪の経験があるのかも調べてみました。
1. 調査・解析方法 気象庁HPを使用
(1)地域の選定
多雪、豪雪で知られる地方として以下の地域を選びました。
現在でも気象官署、測候所ならびにアメダス(自動気象観測装置)が存在する土地です。
@北海道北部(北海道上川郡幌加内町および上川郡幌加内町朱鞠内の2地点)
A北海道日本海側 後志管内倶知安
B青森県 酸ヶ湯
C山形県 大蔵村肘折 月山付近
D福島県 桧枝岐
E新潟県 守門、津南、十日町など
F富山県 富山市、砺波市など
G福井県 福井市、敦賀市など
ざっと挙げただけでもこれだけの地域に分けられます。各々の地域で積雪量や降雪に特長を挙げれればいいのですが。
(2)積雪量の解析
各地の積雪量の値は、基本的には気象庁HPに公開されている公式記録を使用しました。
(3)日平均気温の解析
各地の日平均気温は気象庁HPで公開されている記録を採用しました。
2.結 果
2.1 冬の季節風と雪の関係
冬、大陸は海洋に比べて熱を放射して冷えやすいため、気温が下がります。日本列島の西側のユーラシア大陸の奥地であるシベリアでは、マイナス40℃という極端な低温になることも稀ではありません。このため地表の気圧は高くなります。これと逆に海洋上の気圧は低くなります。このようにして、大陸で高く、海洋で低いという気圧差ができるのです。
日本は世界的に見ても最も冬の季節風が強く吹く地域です。
1989年1月28日正午の天気図を冬型の天気図の一例として示します。
天気図で、札幌、新潟そして福岡と観てみますと、いずれも雪のマーク、風向は北北西もしくは北西、
一方日本海を間にした大陸側の観測地点の天候はいずれも快晴です。西に高く、東に低い『西高東低』の冬型の気圧配置を示しています。
ですから、このような時には北海道から九州までの日本海側の各地では雪が降ります。このとき大陸上にできる高気圧はシベリア高気圧と呼ばれます。
冬の季節風は冷たいだけでなく、大陸から吹く風のため大変乾燥しています。大陸側の観測地点の天気がすべて快晴の記号になっていることからもそのことがよくわかります。
日本の場合、大陸との間に日本海があります。日本海には南から暖流(対馬海流)が流れ込みます。
この海流は冬でも水温が平均約10℃あるため、−10℃前後の冷たい冬の季節風の下層を温めます。
さらに水蒸気を供給して湿らせます。この大気の状態は不安定なため、積乱雲が発生しやすい条件になっています。日本海側の地方では、冬のこのような天気で「ブリおこし」と地元で呼ばれるような発雷も珍しくありません。
また、列島の中心に走る山脈に季節風が当たって上昇気流が発生し、雲の発達を助けます。
このため、冬の日本海側には積乱雲による雪が多く降り、世界でも有数の多雪地帯となっています。
2.2 北海道
(1) 北海道北部
図2に北海道の概念地図を示します。
北海道には中央山脈として大雪山系と十勝連峰があり、冬季にはシベリア大陸から吹き付ける寒気団による季節風が中央山脈の山並みにぶつかって上昇気流を生じ、雪を降らせます。
北海道の冬の気温は日中でも最高気温が零度を上回らない(真冬日)ことが普通であり、山間部に限らず大なり小なり降雪、積雪があります。
年間積雪量の現役日本記録中、北海道からは図2に示しますように上位20位以内に3地点(15位,16位,17位)がランクインしています。
本自由研究の主題は豪雪、多雪に関するものですから、低温については深く触れませんが、本州の豪雪地帯との大きな違いは、とにかく寒冷年には春遅くまで雪が地表に残りやすい、という点にあります。
青森県は北海道に近い気象環境でしょうか。
図3には幌加内町朱鞠内の2006年11月〜2007年5月の積雪量と日平均気温のデータを示します。
解析に使用したデータ期間は、2006年11月〜2007年5月、日々の積雪量を赤線、日平均気温の変化を黒破線で示します。
本レポートで積雪量といいますのは地表に積もり残っている雪の深さ(厚さ)です。正式な気象用語では「積雪深」と呼びますが、本レポートでは両方混在しております。すみません。「降雪量」とは違います。
図3にもどりますと、2006〜2007年の最大積雪量(深)は3月8日に記録した217cmでした。図2によると1月中旬まで100cm程度の積雪量で推移し、1月中旬に数日のうちに約70cm積もり、さらにもう1回約60cmドカ雪があって217cmに達しました。
12月から4月までの日平均気温の平均値は-6.3℃、この温度では降った雪は融けずに降り積もるばかりです。日平均気温が零度以上になったのは、4月になろうかという頃です。この気温でも暖冬年です。この年の積雪の最終日(観測地点で雪がなくなった日)は5月8日でした。
図4は同じく幌加内町朱鞠内の寒冬季といわれた2017年から2018年にかけての積雪量と日平均気温のデータです。
日平均気温(図中黒点線)の変化をみますと、11月はじめから日平均気温が-5℃付近を上下しています。
この年の日平均気温の最低値は2月2日に記録した-18.3℃、その日の最低気温は-28.8℃という大変な低温でした
(図5)。
(図6-1)
図6-1は北海道西部倶知安(くっちゃん)の1969〜1970年の積雪量と日平均気温の記録です。1970年3月25日の積雪量312cmが倶知安観測史上の1位で、全国記録では16位に相当する積雪です。この時の12月1日から4月1日までの
4か月間の日平均気温の平均値は-5.9℃、寒い冬だったようです。
(図6-2)
図6-2は同じ倶知安の暖冬年(1992〜1993年)の例ですが、最大積雪深は179cm、日平均気温の期間平均値は-1.7℃、4か月間全体の値が寒冬と比べて4℃以上の開きがあります。
それでも積雪量が0cmになったのは4月の下旬でした。
次は東北地方の記録を観てみます。
(図7)
(表1)
(表2)
現役観測地点中、国内第1位の最大積雪記録を有するのが、青森県酸ヶ湯です。2013年2月26日の566cmがその記録です。
ついで、国内第4位の積雪記録を持つのが、山形県大蔵村肘折で2018年2月13日に445cmを記録しています。
そのほか、12位(348cm)から13位(341cm)、14位(339cm)と山形県および福島県の山間部の観測地が記録しています。
(図8)
図8は青森県酸ヶ湯の暖冬年(1992〜1993年)と寒冬年(2012〜2013年)の積雪記録および冬期間中の日平均気温の変化を示したものです。
図8下の結果は日本最高記録のものですが一方図8上の記録は暖冬季の例で、寒冬と比べて最大積雪量が約200cm少ないことがわかります。日平均気温の4か月平均値が1.6℃の差があり、寒気の南下程度によることを明確に示しています。
山形県大蔵村肘折も青森県酸ヶ湯と並び、豪雪の里としてよくTVの画面に登場します。
現役観測地全国第4位455cmの記録を持つ肘折は、残雪が多く夏スキーでも有名は月山の北東麓にあります。
月山をはさんで南西麓に位置する大井沢も国内第12位348cmの記録を保持します。
以上は気象庁所管観測地点による公式記録ですが、この付近には隠れ日本一の地帯があります。
(図9)
西村山郡志津温泉がそれです。ここでは気象庁による観測は行われていませんが、山形県の委託を受けて志津温泉の関係者が積雪の測定を行っています。2005年の660cmが隠れ日本一の記録の様です。
(図10)
次は代表的な豪雪地帯の一つ、新潟県です。ただ日本海に近い越後平野と山間部では相当の開きがあります。図10に示す積雪量の記録は1980年代までの記録が目立ちますが、最近でも2022年に津南町で記録した419cmは日本現役観測記録の第4位にランクインする値です。新潟県はたしかに豪雪の有名な県ですが、それも冬場の気温次第というところがあり、2000年代以降は冬の温暖化が目立ちますので、とくに平野部での積雪深の記録更新は少ない
ようです。
(図11)
多雪年と少雪年の積雪量を、3地区(守門、十日町、小出)で比較しました。
(図12)
気象用語に、「三八豪雪」「五六豪雪」「五八豪雪」という言葉があります。この「○○豪雪」は気象庁が命名した正式な気象用語です。短期間のうちに集中的に大雪が降り、そのために社会生活等に大きな被害が出て災害級となった場合に気象庁が命名します。大雨で甚大な被害が出たときに命名される「○○豪雨」の雪版です。
まず昭和38年発生の「三八豪雪」の積雪記録をみてみましょう。このとき、新潟県長岡市で最高積雪318cm、金沢市で同181cm、福井市で213cmを各々記録し、それらは各都市の観測史上1位の記録となっています。
(図13)
(図14)